ただ生きている、それだけで
荷物は増えて行く物です
頭の中に、心の中に、部屋の中に
溜め込んで、詰め込んで、ギュウギュウになっても
まだ、詰め込もうとして
それはいつしか、ずっしりとした形もない、名前もない嫌悪感として自分にのしかかって来る
知ってしまった事や、なんとか出来てしまうと言う苦しみは
なんとかする事で埋めようと自分自身を苦しめます
そんな時には、子供の頃に感じた物を取り戻しに散歩に出掛けます
今日はいいお天気です
歩けば、歩くほど、心の重荷は風がどこかへ運んで行きますよ
子供の目で
誰もいない自然の中を散歩していると
不思議と家を出て間もない頃に詰まっていた、あれこれが足を進める度に消えて行くのが分かります
今年1番のつくしに出会って「1番乗り!」と褒め称え、1番乗りを見つけた証明をしたくて2番手のつくしを探し
ふきの穴を覗いて

若いよもぎを見ては、よもぎ団子作りと犬のおしっこの事なんかを考えて
山菜の頭を、「みっけ!」と心の中で指を刺し進み
山吹の花に「おかえり」を言う
そんな、昨年の春にも考えた様なお決まりの事を考えながら歩いて行けば
気づいた頃には、純度の高い自分の声が心の中から浮き上がっている事に気付きます
頭の中でブツブツ呟いて、意外にも目はキラキラ輝いて、怪しそうにフラフラ歩いて
目を閉じれば、朝露と太陽の陽が混じったにおいがして
後から、湿った木々のにおいも追いかけてきます
青々とした新芽たちが、新しい季節を盛り上げている事を感じながら歩いていると
カエルの叫び声に驚いて

今まで木漏れ日と心地よさを与えてくれていた、整備で薙ぎ倒されて積まれている木々たちを見て
そこには、もう無い物と空を見上げる
そうして、自然の中に身を置けば
どんな事も必要な事で
どんな事も本当は必要のない事なのだと言う自由を思い出したりする
土を踏む感覚を感じて帰路に着けば
新しいものを生み出せる気になって
それでも、無理に新しい物を生み出す必要もないなと自分を許して
帰宅後のお茶を楽しみに歩を進めて現実に帰っていける様なそんな気がする
大人になる悲しみ
子供の頃は、草や木々や花々や土は手を伸ばせば、いつも側にある様に感じていました
大人になると、随分と遠くなってしまったなと思うと悲しくなります
子供の頃の純粋な気持ちで向き合えた自然の姿には
もう会う事は出来ないと言う事がいつでも私の胸を刺します
それでも、せめて近づきたいと思う
子供の頃に感じていた純粋で美しい自然の姿に
足を止める
耳をすませる
鼻を尖らせ、においを感じる
目を凝らして、好奇心を使って辺りを見回す
こうして、土や風、草木や花々
、そして虫たちを
もう一度、近くに手繰り寄せる

ほんのひと時、だけでいいから星を見上げる
ほんのひと時、それだけでいいから木漏れ日の下で目を閉じる
思い出す
土だらけで遊んだ日の事を
そうすれば、重たい荷物は自然と整頓されて行く
もしも、あなたが重たい荷物をまだ背負おうとするのなら
少しだけ、足を止めて心地よいものを感じる時間をほんの数分でも自分にプレゼントしてあげて欲しいと思います
とびっきり心地よい木陰の下で
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